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KOMA KOMA HOUSEを漫画で描く

設計操作


 KOMA KOMA HOUSEは、木造2階建ての母屋に隣接して建つ、アトリエ付き住宅である。限られた敷地のなかに大きな気積を必要とするアトリエと住居を、いかに共存させるかが設計の出発点となった。
 
 アトリエに必要な大きな天井高を逆手に取り、建物の内部に、2層で構成される領域と3層で構成される領域を併置した。各居場所を天高を変えながら立体的に配置し、上下動線によって接続した。

 その結果、移動に伴って視界や光、周辺風景が切り替わり、場面転換を繰り返しながら生活が展開する空間となった。アトリエ、居間、ダイニング、キッチン、茶室といった諸室は独立した居場所でありながら、ひとつの時間軸の上に連続している。

コマとして分節された空間

 私は建築設計と並行して漫画家としても活動してきた。そのためか、この構成を検討するうちに、空間の連なりを漫画のコマ割りに近いものとして捉えるようになった。

 それぞれの居場所はひとつの「コマ」であり、移動によって次の場面へと接続される。ひとつの視点から全体を把握するのではなく、移動に伴って異なる居場所が順次現れる。私はこの空間構成を、コマが連なる漫画の構造になぞらえ、この住宅を「KOMA KOMA HOUSE」と名付けた。

 そこには、完成後の暮らしのなかで、設計者の想像を超える新たな場面が生まれてほしいという期待も込めた。

コマ割りの効果

 この空間構成を伝えるために、漫画を用いることにした。複数のドローイングを時間的な順序のなかに配置することで、建築のシークエンスを漫画のシークエンスへと翻訳する試みである。

 P3では、鳥の視点を介した文字通りの「鳥瞰」によって、敷地と周辺環境を導入する。P4で施主の飼い猫が案内者として登場し、以降はその移動に伴って住宅内部へと読み手を導く。

 空間構成を示すドローイングには大きなコマを与え、その移動の途中に現れる、設計過程で思い入れのあった一角や、暮らしの息遣いを感じさせる場面を小さなコマで挿入した。

 図面だけでは捉えにくい光、風景、季節の移ろい、匂いの気配を織り込みながら、コマを読み進める身体感覚と、住宅内を移動する身体感覚とが重なるよう構成した。

 上下動線に沿った建築案内はP10で一区切りを迎える。P11、12では、住人、猫、鳥それぞれの営みへと視点を移し、この家の日常が未来へ続いていくことを示唆した。建築情報の提示で終えるのではなく、読後に時間の余韻を残すことで、本作をひとつの物語として閉じることを試みた。

解釈の引き渡し

 完成後、制作した漫画を施主に贈った。初めての試みであったため緊張もあったが、施主からは好意的な反応をいただいた。

 一連のやりとりを通して、この漫画によって「設計者が建築やプロジェクトをどのように捉えているのか」を、施主と共有する機会が生まれたことを実感した。

 図面や模型によって建築の構成を共有することはできる。しかし漫画を介することで、設計者がその建築をどのように見ているのかという、いわば「解釈の引き渡し」にまで踏み込めたように思う。

Architectural Mangaへ

 ここまで、KOMA KOMA HOUSEを漫画として表現した実践を振り返った。私は修了制作においても、設計の動機・内容を共有するために漫画を制作した経験がある。当時は方法論として意識したものではなかったが、今回あらためて実作を漫画として描くことで、ドローイングに作者の視点を残し、コマ割りによって時間を編集し、建築体験を他者と共有する可能性に気づいた。

 私は今後、こうした実践を「Architectural Manga」と呼びたい。それは、本稿で試みたように、漫画というメディアを建築表現の一部として位置づけるための仮の名称である。単に「建築にまつわる漫画」という意味ではなく、建築家が空間や建築体験を他者と共有するための言語の一つとして漫画を捉える試みである。

 建築家が設計意図や建築体験を共有する表現として、漫画がより自然な選択肢の一つとなる未来は考えられないだろうか。建築をどのように描き、どのように読み、どのように他者と共有できるのか。今後も制作と実践を重ねながら、その可能性を探っていきたい。

2026年6月 津布久 遊 / TSUBU